インプラント

インプラント周囲炎とは?歯周病との違いと早期発見のためのセルフチェック

 

インプラントは、失った歯の機能を補い、しっかり噛める状態を取り戻せる治療法として注目されています。

 

インプラント治療に関心をもっている方を対象にしたアンケート調査によると、「歯を削りたくなかった」「入れ歯にしたくなかった」「入れ歯が合わなかった」といった理由でインプラント治療を検討される方が多いようです。
けれども、「インプラント治療後のメンテナンス」や「インプラント周囲炎」については、「知らない」と回答された方が多いという結果があります。


参考:J-STAGE|日本口腔インプラント学会誌27巻(2014)2号「インプラント治療に対する意識調査」図2より >

 

インプラント治療後は、天然の歯と同じように、毎日のケアや定期的なメンテナンスが必要であり、メンテナンスが十分でなければさまざまなトラブルが起こる可能性があります。
中でも特に、「インプラント周囲炎」には注意が必要です。
ここでは、インプラント周囲炎について、詳しくお話しします。長くインプラントを使える状態をめざすために、このコラムを参考にしていただけましたら幸いです。

 

 

インプラント周囲に炎症が起こる「インプラント周囲炎」とは

インプラント周囲炎とは、インプラント周囲の歯ぐきや、骨(歯槽骨)に炎症が起こる病気です。

 

炎症が起こる直接的な原因は、歯の表面に付着するプラーク(歯垢)に含まれる細菌です。
プラークの中に存在する細菌は、増殖する過程で毒性物質や炎症を引き起こす物質を放出します。

 

初期の段階では、歯ぐきの腫れや出血といった症状がみられますが、やがて炎症の範囲が広がり、骨にまで影響が及ぶようになるのです。
炎症の範囲が歯ぐきにとどまっている状態であれば、適切なケアやクリーニングによって症状の改善が期待できます。

 

ただし、骨は一度溶けてしまうと、自然と元の状態に戻ることは難しく、治療も複雑になります。
さらに症状が進むと、インプラントがぐらついたり、噛みにくくなったりするだけでなく、最終的には脱落してしまう恐れもあるのです。
そのため、早い段階で異変に気づき、対応することが大切です。

 

 

インプラント周囲炎が起こる原因

インプラント周囲炎は、いくつかの要因が重なって発症するケースが少なくありません。
そのため、ご自身に当てはまるリスクを把握することが予防につながります。

 

歯垢(プラーク)の蓄積

インプラント周囲炎のおもな要因は、歯垢(プラーク)の蓄積です。
インプラントは人工物ですが、その周囲には天然の歯と同じように歯垢(プラーク)が付着します。
日々のお口のケアに問題があると、細菌が増殖し、炎症を引き起こしやすくなるのです。
歯並びによっては、歯ブラシが届きにくく、磨き残しが生じやすい場合もあります。
このような状態が続くと、歯垢(プラーク)が蓄積しやすくなり、インプラント周囲炎のリスクが高まるのです。

 

歯科医院でのメンテナンスを受けていない

次に、歯科医院で行うメンテナンスを受けていないことも、インプラント周囲炎の要因となる可能性があります。
ご家庭で歯磨きだけでは、すべての汚れを取り除くのは難しく、歯科医院で行う専門的なクリーニングで除去することが推奨されます。

 

また、定期的に歯科医院に通っていないと、初期の症状に気付かずに症状が悪化してしまうことになりかねません。
インプラント周囲炎は初期の段階では、自覚症状がほとんどないという特徴があります。
インプラント周囲炎を早期に発見するためには、定期的に歯科でチェックを受けることが大切です。

 

喫煙や生活習慣

さらに、喫煙や生活習慣もインプラント周囲炎のリスクを大きく高める要因となります。
タバコに含まれる有害物質は血流を悪化させ、免疫機能を低下させるため、炎症が起こりやすく、そして治りにくくなるのです。

 

また、不規則な生活や偏った食習慣も、お口の健康に影響を与えます。
栄養バランスの乱れや睡眠不足が続くと、全身の免疫機能が低下し、細菌に対する抵抗力が弱まります。
インプラント周囲炎の予防には、お口のケアだけでなく、日々の生活習慣を整えることも重要です。

 

糖尿病などの全身疾患

そのほか、糖尿病などの全身疾患も影響します。
糖尿病とは、インスリンというホルモンの働きが低下することで、血糖値のコントロールが難しくなり、数値が高い状態が続く病気です。
血糖値が高い状態が続くと、血管や免疫機能にさまざまな影響を及ぼします。

 

血糖値のコントロールが不十分な状態では、細菌感染に対する抵抗力が低下し、炎症が悪化しやすくなります。
さらに、傷の治りも遅くなるため、炎症が長引いてしまうのです。

 

かみ合わせのバランス

また、かみ合わせのバランスも重要です。
インプラントに過度な力がかかると、周囲の組織に負担がかかり、炎症の原因になることがあります。

 

 

歯周病とインプラント周囲炎の違い

インプラント周囲炎は歯周病とよく似ていますが、異なる点もあります。

 

インプラント周囲炎と歯周病は、どちらも細菌感染によって歯ぐきや骨に炎症が起こる病気です。
症状もよく似ていて、どちらも、歯ぐきの腫れや出血、膿が出る、口臭が強くなるといった変化がみられます。

 

けれども、構造上の違いから、進行のスピードに違いがあります。
天然の歯には、歯根の周りに歯根膜というクッションのような組織があり、外部からの刺激や細菌の侵入を防いでいるのですが、インプラントにはこの歯根膜が存在しません。

 

そのため、天然の歯にくらべて、細菌が侵入した際に炎症が広がりやすく、進行のスピードが速くなる傾向があります。
結果的に、短期間で骨の吸収が進んでしまうこともあるのです。

 

また、歯根膜には、痛みや違和感を感知するセンサーのような役割もあります。
歯根膜がないことで痛みなどを感じにくく、気づいたときにはすでに重症化していることもあります。
このような理由から、インプラント周囲炎は歯周病以上に早期発見と予防が重要なのです。

 

 

インプラント周囲炎の発見が遅れて悪化するとどうなる?

インプラント周囲炎は、初期の段階では歯ぐきの腫れや出血といった軽い症状が中心ですが、進行するとインプラントを支える骨(歯槽骨)が徐々に溶けていきます。

 

骨が溶けてしまうと、インプラントをしっかり支えることができなくなり、ぐらつきや違和感が生じるようになります。
さらに症状が悪化すると、噛みにくさを感じたり、痛みが出たりすることもあるのです。

 

重症化した場合には、インプラントの維持が難しくなり、最終的には撤去が必要となるケースもあります。
また、炎症が周囲の組織に広がることで、お口全体の健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 

このような状態を防ぐためには、初期の段階で異変に気づき、適切な処置を受けることが重要です。
インプラント周囲炎は早期に対応することで、進行を抑えられる可能性があります。
重症化させないためにも、日頃からのケアと定期的なチェックを心がけましょう。

 

 

早期発見が大切!インプラント周囲炎のセルフチェックポイント

インプラント周囲炎は、初期の段階で発見し、適切に対応すれば進行を抑えられる可能性があります。
けれども、インプラント周囲炎は、自覚症状が少ないまま進行するケースが少なくありません。
早期発見のためには、日ごろからのセルフチェックが非常に重要です。

 

ちょっとした違和感を見逃さないように、日常的にご自身のお口の状態をチェックする習慣を持ちましょう。
以下のような症状がみられる場合は、注意が必要です。

・歯ぐきが赤く腫れている
・歯磨きの際に出血する
・インプラント周囲に違和感や軽い痛みがある
・膿が出る、または口臭が気になる
・ぐらつきや噛みにくさを感じる

これらの症状がある場合、インプラント周囲炎を発症している可能性があります。
特に、出血や腫れは初期の段階からあらわれやすい症状ですので、見逃さないようにしましょう。

 

一つでも当てはまる場合は、自己判断で様子をみるのではなく、できるだけ早めに歯科を受診することが重要です。
早期に対応することで、症状の進行を防ぎ、インプラントを守ることにつながります。

 

 

インプラントを長く保つために~日々のケアと定期メンテナンス~

インプラントを長く快適に使い続けるためには、インプラント周囲炎の予防が欠かせません。
その基本となるのが、毎日のセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスです。

 

セルフケアでは、歯ブラシによる丁寧な清掃に加えて、歯間ブラシやデンタルフロスを活用して、汚れをしっかりと落としましょう。
じつは、歯と歯の汚れは歯ブラシだけでは6割程度しか落とせないことがわかっています。
デンタルフロスや歯間ブラシを併用することで、除去率は8割まであがります。
汚れがたまりやすい部分だからこそ、普段から「歯間ケア」を意識することが大切です。


参考:神奈川県「今日から始めるすき間ケア」より >

 

また、ご自身では取りきれない汚れや歯石は、歯科医院での専門的なクリーニングによって除去する必要があります。
定期的に通院することで、インプラントの状態やかみ合わせのチェックも受けることができ、トラブルの早期発見につながります。

 

さらに、生活習慣の見直しも大切です。
禁煙やバランスの取れた食事、十分な睡眠などを心がけて全身の健康を整えることが、お口の健康維持につながります。

 

インプラントは、治療後のケアによってインプラントの寿命(使用期間)に影響が出る治療です。
適切なセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスを継続していれば、長期間にわたって機能を維持できる可能性が高くなることが報告されています。
実際に、部分的またはすべての歯を失った症例において、10〜15年経過しても機能を維持している割合は上顎で約90%、下顎で約94%と非常に高い水準です。


参考:厚生労働省「歯科インプラント治療のためのQ&A」p3より >

 

大切なインプラントを長く守るためにも、定期的にメンテナンスを受けて、適切なお口のケアを実践しましょう。
当院では、お一人お一人の状態に合わせて、適切なメンテナンスを継続できるようにサポートしています。
インプラント治療に関することでわかりにくいことがあれば、どのようなことでもご相談ください。


当院のインプラント治療 >


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